第百九章

葵は舞台のオーケストラピットへと歩みを進めた。

昇降ステージは最下部で停止しており、ぽっかりと口を開けた漆黒の入り口が露わになっている。

下から微かな足音が響き、静まり返った広大な劇場内にくっきりと反響した。

葵は階段を下っていく。革靴がコンクリートの床を踏みしめるが、足音は一切立てない。

春が後ろから続き、懐中電灯で足元を照らしている。

防爆扉は半開きになっており、中から漏れる青白い光が壁に投影され、どこか不気味な雰囲気を漂わせていた。

葵が扉を押し開けた先――その光景に、彼女は思わず息を呑んだ。

悠が椅子に後ろ手に縛り付けられていた。口元は血まみれで、全身にいくつもの刃物傷...

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